スーパー電子手帳のカレンダーとドットマトリクス

いかづちSqueak

2020年10月21日 21:49

今は別館のサイトの方に昔(2007年)書いた内容を、手直ししたり新たな考察を加えたりしたもの。
元のページはこちらだが、文字コードが指定されていないのでChromeなどの低機能なブラウザでは文字化けして見えないかもしれない。Firefoxをおすすめする。


むかーし、むかし。電子手帳というものがあったそうな。
今でもあるけど、今は「ぴーでーえー」なんて横文字で呼んだりして、過去の「電子手帳」という呼び名の方がカッコよくて自分は好きだ。大体皆PDAが何の略か知らないだろう。なにせ自分も知らないのだ。
(↑と当時書いたのだが、今はPDAも携帯電話に吸収されて無くなってしまった。諸行無常。)

その電子手帳が「ちょっと高価な子供のおもちゃ」になりだした頃の話。

思い出深い電子手帳を紹介しよう。カシオから発売されていた電子手帳だ。
「スーパー電子手帳」シリーズと、何かわからないがたぶん何か違う「スーパー電子手帳Jr.」シリーズ。
男児向け女児向けで様々な種類があり、「PKバトルリーグ」「ツインゴール」「ペットテレパシー」などある。

機能は定番の電話帳・カレンダー(スケジュール帳)・電卓。それに子供向けだから占いやらゲーム。
この電子手帳は7×7ドットのひらがなが4行×12文字表示できる。つまり普通に考えて縦32ドット×横96ドットだ。

ほとんどの表示は8×8単位(漢字は16×16)なのだが、例外がカレンダー。

こんな感じに3×5の数字を使っている。3×5は数字をまともに描ける最小のドット数と言ってよいだろう。
日曜祝日は白黒反転、数字横の点はスケジュールがあることを示す。

ここで疑問に思うことはないだろうか?
そう、カレンダーの最大行数は6行。数字は縦5ドット。つまり5*6+隙間5ドットで35ドットとなり、32ドットの画面をオーバーしてしまう。


それでどうなっているかというと簡単なことで、その分のドットがきちんと用意されている。
しかし極限まで無駄を切り詰めているので、なかなかけったいな形になっており、

こうである。
もう惚れちゃいますね。
ここに、

こうなるわけだ。

ところで、これでは日付の表示に画面全部を使ってしまい、曜日が表示できない。
分かりづらくないかって?
大丈夫。

本体の方に書いてあるから。


さて、ここからが新たな発見である。

この電子手帳、パッケージで画面の総ドット数を誇っているのを過去に見た覚えがある。
探すとこちらに発売元はツクダオリジナルだが見たところ同シリーズの「似顔絵電子手帳カラーリスト」のパッケージが見つかった。

「3118ドット」とある。
数えてみよう。メイン部が縦32×横96、加えてはみ出し部分が(4×9+3)が2個で、3150ドット。
おや、計算が合わない。差は3150-3118=32。32? 縦のドット数と同じだ。
まさか…と別に見つけた写真で数えてみると、確かに横は95ドットしかない。そこも切り詰めていたか。

しかし32ドット減らすと何が嬉しいのだろう。
切りの良い32×96=3072ドットには足りないし、よくあるアイコンのためにコモン線が1本多いタイプで33×96=3168なら32ドット減らさなくても足りる(ドットマトリクス外にアイコンがあるが見たところ16個であり、足りる)。
しかし、考えてみると追加のドットはすべて個別に制御する必要があるわけではない。
表示する図形は30・31の下の方と右の点だけ。
右の数字部は「31」しか表示しないので、字と地の2セグメント。左も、調べてみると「1」の字形は上で想像で書いたようなセリフ付きのものではなくデジタル数字の直線の「1」であったので、0と1を表示するには2セグメントで、地を合わせた3セグメントで済む。4つの点も足して合計わずか9セグメントで足りる。
実際には隣り合っていないドットを1つのセグメントにまとめることはできないので多少多くなるが、下図の左9セグメント右7セグメントでいけそうだ。

このセグメントを制御する配線を考えてみよう。

…と、考えてみたら普通にはできそうにない。
何が問題かというと、この囲まれたセグメント。

ドットマトリクス部から横を1ドット削ることで使えるようになるセグメントは、1seg×32com分。(マトリックスの縦横のコモン線・セグメント線と個々のセグメントが紛らわしいので前者をcom・segと書く)
つまりこれだけではマトリックスにすることはできず、セグメント側を全体を1seg(使い方としてはコモン)に割り当ててcom側で制御するしかない。
これではセグメントの隙間を通しでもしない限り他のセグメントに囲まれたセグメントを個別に制御することができない。

これがcomがもう1本あればseg線を上から伸ばしてできるのだが…

もしくはsegが2本あれば2×Nのマトリックスにできてどうにかなるのだが…

と思ったが、よく考えたらそんなことをしなくてもできた!
囲まれたセグメントは1個だけ。1本だけならcom線も追加ドットに隣り合った最下段の1本を上から伸ばすことができる。

周囲のアイコン含め、配線にも問題がない。


このパターンだとうまく説明がつくことがある。
実物の表示は、YouTubeに動画があり、分かったのだが、

これを見ると、最下段でない日曜日には下に枠が付いていることが分かる。
最下段の数字が白黒反転した時は、ドット数からして下に枠がつかず、不自然である。つまり、下もう1列のドットは付けたくても付けられないのだと考えられる。
comがもう1本あって1com×複数segのパターンであれば、下もう1列は容易に追加できる。

また、追加のドットを下ではなく上に付ければ、白黒反転時に端が切れるのが「30」「31」から「1」「2」になり、日曜を含まず休日表示が起こりにくい点、文字数が少ない点からこちらの方が好ましいと考えられるが、1と2を表示できるパターンは囲まれるセグメントが多く、この作戦は不可能である。0と1の下4ドットだからできたパターンなのだ。
1com×複数segのパターンであれば上に1と2のセグメントも可能だ。

もうひとつ、「1」の字形がセリフ付きでなく縦棒なのも、セリフ付きの形は不可能だったためとも考えられる。縦棒でも特におかしいわけではないが、3×5ドットの数字では1に上下や上だけにセリフを付ける方がよく見る気がする。
なお、segが2本ある場合では、下もう1列が不可、1と2のパターンが不可は同様だが、1に上だけならセリフを付けることができる。

実機は確認していないので合っているかはわからないが、今のところ観察結果を上手く説明できており、なかなか可能性が高いのではないかなと思っている。

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