ゲームボーイの電池交換に導電インク

いかづちSqueak

2018年03月25日 03:01

ファミコンやゲームボーイなど昔のゲームソフトにはデータの保持にボタン電池が使われている。
(最初に知った時には驚いた。壊れなければ永遠に使えると思っていたゲームソフトにまさか寿命のある電池が入っているとは。しかもちっぽけなボタン電池。すぐにでも切れてしまいそうではないか。)
古いソフトの電池を交換する上で何が問題かといえば配線の接続方法だ。
元々はスポット溶接で留められている。これなら確実に導通がとれるだろう。しかし家庭にスポット溶接機はない。どうやって留めるか。
まっとうな方法は既にタブが溶接された電池を買うことだ。電池ホルダーを使うのもよいだろう。
しかしなぜか買う気にならない。その辺で売ってないとか割高とかの理由もあるが、たぶん専用品を使うのは負けた気がするという気持ちの問題が大きいと思う。

溶接以外の方法をいろいろ試してみるのだが、なかなかうまくいかない。溶接の素晴らしさが分かる。
リード線をテープで留めただけだと、すぐに接触不良でデータが飛ぶ。
何かしっかりとテンションを掛けられる手段がないだろうか。
リード線を熱収縮チューブで固定してテンションを掛ければどうかと試してみたが、駄目であった。しばらくしてデータが飛んだ。
また厚みでケースに微妙に収まらず、無理やり閉じたらケースが膨らんだ。(もっともこれはCR2032を使ったのが悪かった。1616にすれば大丈夫だったかもしれない)
もっとしっかりとテンションが掛かる物を考えるとクリップが思いつくが、GBソフトの狭いスペースに入るものはなかなかないだろう。
電池に直接ハンダ付けするという最終手段もあるが、アルカリ電解液の詰まった電池に高熱を与えるのは大変危険なのであまりやりたくない。またそもそも材質がハンダをはじくのであまりしっかりと付いてくれない。

そんなわけでなかなかこれといった方法が見つからなかったのだが、ふと導電インクが使えるのではないかと思い立った。
以前何かに使えるかと思って買ったものの何にも使っていなかったものだ。
「Bare Conductive Electric Paint」という名のもので、調べたら同じものがAmazonで売っている

試してみると、予想以上によい。
この種のカーボンタイプの導電インクは回路を描くには少々抵抗が大きいのだが、今回導線と電池表面の間のわずかな隙間を埋めるだけなので抵抗は無視できる。
無視できる…と思うが念のため計ってみると30Ω。思ったよりはあるな。
しかし電流はわずかなので抵抗による電圧降下は気にする必要はないだろう。計算したら1mVもないくらいだし実際計っても分からない。

そして接着力だが、結構ある。剥がそうと思って力を入れれば線を引っ張って剥がしたり爪で引っ掻いて剥がしたりはできるが、意図せず剥がれるようなことは無さそうな程度にある。
付きにくいハンダ付けよりはるかに信頼できる。

最初に試したものがこちらだ。

導線の太さで厚みが出て、熱収縮チューブのときほどではないものの微妙にケースが膨らんでしまった。
このあたりでそもそもGBソフトに使われている電池はCR2032でなくCR1616であったことに気づいたが、買いに行くのは面倒だし、うまくすれば入りそうなのでそのまま2032を使い続けることにした。
もう1点問題があり、基板上に電池を固定するために斜めにテープを張ったのだが、カートリッジの上蓋は枠が出っ張っているので閉める時引っかかってしまう。

それを踏まえて2個め。
厚みを抑えるために芯線をバラして接着することにした。カプトンテープで絶縁をとってある。
この方が抵抗をより抑えられそうな気がするし。しかし残念ながらこちらの抵抗は測り忘れてしまった…。

基板にはんだ付け。カートリッジのケースに入れてみると問題なく閉まった。

固定はカプトンテープでは上手くできず、グルーガンで留めようかと思っていたのだが、ただ閉じるだけで振ってもガタつくこと無く一応固定されているようなのでそのままにしてしまった。

1個めが2ヶ月半、2個めも1ヶ月ほど経つがどちらもデータを保持できている。

2018/12/22:
ふと思い出して確認したところどちらもまだデータを保持できている。

2020/11/16:
ふと思い出して確認したところ、1個めはデータが消えてしまっていた…。カートリッジコネクタの接触不良で何度か挿し直したのが悪影響を与えたかもしれない。新しくデータを作成し数分後確認すると正常。
2個めはデータを保持できている。

2021/10/21:
ふと思い出して確認したところどちらもデータを保持できている。(1個めのは2020/11/16に消えて作り直したデータ)
何もしなければデータがもつことの確認はもう十分かな。せっかくなので開けて見てみよう。
3年半経ってどう変わったか。


うーん…見てもよく分からない。
テープも取ってみるか…

うむ、特に接着面が剥がれかけてるとかそういうことは無さそう。(テープに付着しているが、乾く前にテープを貼ったので不思議はない)
バックアップ電池の交換にカーボン系導電インク、なかなか良さそうだ。

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